湯宿温泉 湯本館 |
かつて三国街道の宿場町だったという温泉街には、往時をしのぶ古い町並みが残されている。石畳の道をそぞろ歩けば、右手に「竹の湯」、左手に「松の湯」と、わずかな距離に次々と共同湯が現れる。3つめの「窪湯」の手前、黒い板塀と古木に囲まれた静かなたたずまいの中に、湯元の「湯本館」がある。
開湯は1,200年前と伝わり、同館に残る古文書によれば、初代沼田城主の真田信之が関ヶ原の合戦の後、戦いの疲れを癒やすために訪れたことが記されている。
「温泉は湯宿にとって共有の財産ですから、湯元として湯を守りつづけていく責任を感じています」と、現館主の岡田作太夫さん。「自分は、たぶん21代目では」と言う。創業は1,500〜1,600年の間、あまりに古過ぎて正確なことは分からないらしい。
その守り続けている源泉は裏庭に湧く。一見、池のように見えるが小屋掛けされていて、湯けむりが立ちのぼっている。この泉から湯宿温泉の歴史が始まったのである。真田信之をはじめ代々の戦国武将たちが身体を癒やした湯が、今も目の前でふつふつと湧き出している。見ていると、その神々しさに手を合わせたくなった。
源泉の温度は約62度。加水せずに浴槽へ流し入れているため、もちろん熱い。「熱くなけりゃ、湯宿の湯じゃねえ」と地元の人が口をそろえて言うくらい、熱い。私も何度となく湯宿を訪れているが、一気に肩まで沈めたためしがない。
飲泉所にもなっている湯口には、湯花が堆積して、珊瑚礁のようになった真っ白な石がいくつも並んでいる。ひしゃくで、まずは一杯。腹の底を温めて、再度、気合を入れ直して入湯。ウーンとうなりを上げながら、徐々に体を沈めていく。慣れるまでに時間がかかるが、慣れてしまうとガツンとくる浴感が、たまらなく癖になる湯だ。
湯上がりにロビーで主人と話し込んでいたら、常連客が声をかけて行った。「熱くて、いい湯だったよ」と |
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(C)2010 Jun Kogure / Hajime Kuwabara |
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源泉名 |
湯塾温泉 洗湯 |
湧出量 |
測定不能(自然湧出) |
泉温 |
61.5度 |
泉質 |
ナトリウム・カルシウム―硫酸塩温泉 |
効能 |
リウマチ性疾患、創傷、高血圧症、動脈硬化症、婦人病、胃腸病ほか |
温泉の 利用形態 |
加水なし、加温なし、完全放流式 |
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